コリンクについて思ったことを書く【レジェンズアルセウスネタバレ注意】
新作アルセウスのネタバレ注意!ネタバレが嫌な方はブラウザバックを推奨したします。
それでも読んで下さる、という方は下にスクロールおねがいします。
レジェンズアルセウスという新作を遊び、個人的に印象に残ったシーンなので記事として残させて頂きました。長文となりましたがご了承下さい。
謎の光に導かれて、ショウ(以下主人公と書く)は一人きりで見知らぬ世界にやってきた。
記憶がない。半袖半ズボンの軽装だ。助けてくれるような身寄りがない。雨風から体を守る術も当然持たない。
野生動物であるポケモンに襲われたら、すぐに死んでしまう。ポケモンアルセウスの冒頭は、このような絶望的な状況から始まる。
そう、私がアルセウスを遊んでみて最初に痛感したのは『絶望』だった。
運よくラベン博士と利害が一致して人が住んでいるコトブキムラまで辿り着いたものの、そこでは歓迎されることはない。
恰好が現代風の主人公は怪しい不審人物として扱われる。それは主人公が空から降ってきたため、空に穴が空いてしまったためだ。
能力を示さなければ村から追放される、そうなれば死んでしまうという絶望である。
少し話を変えよう。アルセウスまでの歴代のポケモンの話は、言うなれば【出世】がメインテーマの物語だ。
ポケモンリーグのチャンピオンを目指す、というのはそういうことだろう。
しかしこのアルセウスの物語はそうではないと私は感じている。ならばメインテーマはなんだろうか。
エンディングまでプレイしてみた私の個人的な解釈だが、主人公が生き抜くことができる場所を作るというのがこの物語の主題であると感じている。
ギンガ団の内部で出世する、というのはそのための手段にすぎない。つまり【生存】がこのゲームのメインテーマだと思っている。
そのために主人公はコトブキ村の中で居場所を作ろうとギンガ団の実技試験に合格。
ポケモンを捕獲し生体を調査しながら強くして力をつけ、ヒスイ地方全土に散らばっている各地の有権者に渡りをつけ、各地で暴れるキングポケモンの調査をする。
それと同時に困っている住民の手助けをして、信頼を得ようとする。
そして険しい山の中、沼地の中、火山の中、吹雪の中あらゆる危険なポケモンに襲われながらヒスイ地歩を周り、全てのキングポケモンを鎮め、ヒスイ地方に平穏をもたらすことに成功する。その結果、徐々に認められていく。
これらは全て主人公がコトブキムラのために尽力し、居場所を守るという【生存】のためにやらなければならないことだった。そうでなければ村から追い出され、死んでしまうのだから。
『もし、主人公が空から落ちて落ちてこなかったら今も荒ぶるキングが誰かを襲っていたのかも』
キングが静まったあとにイモモチを食べながら相方役のテルに上記の用に感謝された時は、純粋に信頼されていることに喜ぶことができた。
だが主人公が尽力してもギンガ団の長であるデンボクは、主人公を疑い続けていたままだった。
『どれだけキングを鎮めても
空から落ちてきた怪しいお前を疑う人間は少なからずいる
信頼を得るため己の正義を行動で示せ』
5体目のキングを鎮め、残り1匹となったにも関わらず上記の言いざまである。
どれだけ努力しても、行動で示してもギンガ団の頭領であるデンボクに疑われたまま―――キングを鎮めながらも筆者はもやもやとしたものを感じていた。そしてその溝が原因で、主人公は【生きるための場所を作る】という目標が果たせなくなった。
そう、天空の裂け目から漏れ出した力のせいで空が不気味な紫に覆われたためである。
結果、主人公はデンボクから記憶をなくしているにも関わらずお前は何者だ!?と詰め寄られ主犯ではないかと疑われる。挙句の果てにはお前がキングが暴れた黒幕では?とまで言われ村から追放されてしまう。各地の暴れたキングを鎮めたのは他でもない主人公なのに、である。
『空から落ちてきた人間だぞ 誰が素性を保証できるのだ 誰が大丈夫だと保証できるのだ』
デンボクから叩きつけられた強烈な悪意を忘れることはしばらくできそうもない。
『やはり空から落ちてきた人間は……』
村のために尽力してきたのに、村人たちもデンボクに怒り、主人公を庇い立てすることはなかった。
テルやラベン博士はボスもひどいですよね、と口では言うが主人公が村から追い出される時に直訴して止めてくれなかった。
誰も助けてくれない。
シマボシ『主人公をかばうことで累が及べばどうする』
キクイ、ヨネ『主人公を助けたいけど、他の人に迷惑がかかる。お前を受け入れる人間はどこかにいるはず』
私がこの時に感じていたのは人間に対する無常さと悲しさと、失望と、怒りだ。
シマボシ、キクイ、ヨネ。権力があるものは皆主人公を疑ったままで、助けてくれない。
他人に迷惑がかかるなんて知るか、村のために尽くしてきた結果がこれか!今助けて欲しいのはこっちのほうだ!
私は叫びだしたかった。
追放された自然の中水面を浮かべる主人公の表情は暗く沈んでいる。当然だろう。私もこのまま入水自殺でもするんじゃないかと思ったぐらいだ。
そんな水辺に佇む主人公にのそばに歩いてきたのが、一匹のコリンクだったのだ。
コリンクは一鳴きして主人公に近づく。すると主人公も悲しそうな表情を崩し、コリンクに笑顔をみせた。そしてコリンクは主人公の笑顔を見ると、ルクシオの群れの中に戻っていった。
私はなぜだか、その瞬間猛烈な感動を覚えた。
コリンクは序盤から出てくるが、とても気性の荒いポケモンで、初めてポケモンを捕まえるチュートリアルで人を襲い獰猛だから注意と促されていた。相方のテルもコリンクの電撃で気絶したらしいし、実際に主人公を襲ってくる。とにかく危険ということが強調されたポケモンだ。
自然の厳しさ、ポケモンの恐ろしさの象徴と言えるかもしれない。
人によって解釈は分かれる所だが、私は獰猛なコリンクだけが、行き場のない主人公を励ますように寄り添ってくれたということは。
主人公がヒスイ地方のために駆け回りキングを鎮め、頑張ってきたといのをコリンクは本能で察知したのではないか。そうでなければ気性が荒いコリンクが、人を励ましてくれるということはないのではなかろうかと思っている。
私はこのヒスイ地方の物語をただポケモンという脅威が過酷なだけの世界、だと思い込んでいた。人間達は温かい世界だと。だがこの時点では人の脅威であるポケモンだけが主人公の苦悩を分かってくれ、味方してくれたのである。
思い返してみると実際に村から追放された主人公を無条件で助けてくれたのも、今まで心をかよわせてきたポケモン達であり、コトブキ村の人間ではない。
私にとって長らくこのアルセウスの世界で住み着くポケモンは人間を襲ってくる大きい怪物であり、恐怖の対象である。実際に遊んでいた私もとても怖かった。
だけども、それだけではない。恐ろしいけれども、とても暖かく優しい面もあるのである。
人間と同じだ――――。
私はこの件があった後、いつの間にか主人公を襲ってくるポケモンを恐怖する感情が薄れ、人とポケモンが共存できる世界がいいなあと心の奥底から思えるようになり、よりこの世界に対してのめりこむことができたのである。
そしてこの思いは、人とポケモンが日常的に共存するようになった未来のシンオウへと繋がっていくのであった―――。
もう似たような文があったのでしたら申し訳ございません。終盤のコリンクの場面は個人的にかなりの名シーンだったので、思うままに熱い衝動を書いてしまいました。
ここまで読んで下さりありがとうございました。